桜を見る会」、安倍昭恵夫人の事業へ出資も  IR汚職で証人買収で逮捕された秋元議員の支援者の正体

 

  
週刊朝日
 
2019年4月の「桜を見る会」に出席した安倍晋三首相と昭恵夫人(C)朝日新聞社

2019年4月の「桜を見る会」に出席した安倍晋三首相と昭恵夫人(C)朝日新聞社

保釈され、衆院本会議に出席した秋元司被告

保釈され、衆院本会議に出席した秋元司被告

 カジノを含む統合型リゾート施設(IR)汚職をめぐり、収賄罪で起訴された衆院議員の秋元司被告の事件で新展開があった。

【写真】政治資金パーティを開くなど活発に動く秋元被告

 東京地検特捜部は8月4日、秋元被告に現金を渡した贈賄側の被告らに「裁判で秋元被告に有利な証言すれば、報酬を渡す」などと偽証をもちかけた3人の会社役員、淡路明人容疑者、佐藤文彦容疑者、宮武和寛容疑者を組織犯罪処罰法違反(証人等買収)容疑で逮捕した。

 淡路容疑者と佐藤容疑者は6月27日に沖縄県那覇市のホテルで秋元被告へ現金を渡したとされる贈賄側の中国企業「500ドットコム」元顧問、紺野昌彦被告に1千万円、翌日には2千万円を提供すると申し出たという。

 宮武容疑者は7月に同じ中国企業の元顧問、仲里勝憲被告に数百万円を供与すると申し出たという。

「佐藤容疑者は7月22日に紺野容疑者へ直接、現金2000万円を手渡し、偽証を依頼したが、その直後に現金を返却されている。淡路容疑者らは秋元被告の支援者。秋元被告は保釈後、何度も接触していた」(捜査関係者)

 逮捕された3人の中でキーマンとされるのは、淡路容疑者だ。

 淡路容疑者は3年前、いわゆるマルチ商法消費者庁から一部業務の停止命令を受けた札幌市の「48(よつば)ホールディングス」の元代表取締役で、秋元議員の政治活動を支援していたという。さらに淡路容疑者は安倍晋三首相とも「桜を見る会」などを通じて接点があった。

 淡路容疑者は2016年の「桜を見る会」に招待され、その前日の前夜祭で安倍首相や昭恵夫人との写真を自身が当時、社長を務めていた48ホールディングスのPRに使用していた。一緒に逮捕された佐藤容疑者も48ホールディングスの取締役だった。

 48ホールディングスは仮想通貨「クローバーコイン」の勧誘に安倍首相や昭恵夫人との写真を使い、信用性を高め、2017年6月までに200億円を超す売り上げがあった。

 しかし、消費者庁によると48ホールディングスに関する消費者からの被害相談は300件以上寄せられ、2017年10月、消費者庁は48ホールディングスに3か月間の業務停止命令を出し、クローバーコインの購入者から、全国で訴訟が相次いだ。

 

また、淡路容疑者は昭恵夫人が2016年にはじめた山口県下関市のゲストハウス「UZUハウス」にも資金提供。2018年8月に「UZUハウス」開業のパーティにも、淡路容疑者は招待を受け、安倍首相や昭恵夫人と記念撮影におさまっていた。こうした疑惑は何度も国会で追及されていた。

 安倍夫妻とも交流がった淡路被告と秋元被告はどんなつながりがあったのか? 秋元被告の弁護に関わった関係者はこう語る。

「淡路容疑者らは秋元被告の支援者だと聞きました。しかし、贈賄側にカネを渡せなど、そんな話はまったくしていなかったと聞いています」

 秋元被告自身には昨年末の逮捕時から検事出身の別の弁護士がついていた。秋元被告の事件は贈賄側の紺野被告らから300万円の現金を議員会館で受け取ったか、否かが大きな争点となっている。秋元被告は現金の受け取りを否定。前出の秋元被告の関係者はこう続ける。

 「紺野被告らが検察ストーリーに乗って、300万円を渡したと証言しているのではないかと秋元被告の弁護側は疑念を抱いていた。そこを確認したいと、弁護側は紺野被告らと接触しようと動いていた。すると、紺野被告から連絡があり、7月末に会う日程も調整していた。そのタイミングで淡路容疑者ら3人が逮捕されました」

 コロナ禍にもかかわらず、秋元被告は7月30日、東京都内のホテルに250人ほどを集め、7月勉強会「イブニング・セミナー」という政治資金パーティを開催。出席した秋元被告の知人がこう話す。

「秋元被告はマイクをもって声高に『私は完全に無罪です。贈賄側の被告たちがカネを渡していませんでした、勘違いだといえば、彼らも無罪になる。そうなると、カネを贈られていない自分も無罪』などと言っていました。そこに、今回の逮捕のニュースを聞いて秋元被告のスピーチと共通点もあり、大丈夫なのかなと心配です」

 前出の秋元被告の関係者は検察から提出された秋元被告の刑事記録を読んだ印象をこう語る。

「国会議員を逮捕、起訴するには、かなり証拠が薄い。無罪判決が出る感触もあった。検察は3人を逮捕し、秋元被告の保釈取り消しを狙っているのではないのか」

 前出の捜査関係者はその狙いをこう語る。

「淡路容疑者ら3人の支援者が自発的に危ない橋を渡るようなマネをするのか?秋元被告の関与が重大なポイント。今後、その有無も含めて捜査している」

 秋元被告の弁護人の後任にはカルロス・ゴーン被告の弁護人も務めた、弘中惇一郎弁護士の名前が取りざたされている。

(本誌取材班)
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